いい加減鬱陶しいと思ったところで自殺未遂したと聞き、愛ちゃんの正体も確認しないままに、何故か俺はちょっとだけ良心の呵責に苛まれそうになってしまった。
が、何で俺が良心の呵責に苛まれなきゃなんないのかその理由を考えたとき、そうする必要なんてないじゃないかとふと我に戻り、自分を責めることに踏みとどまった。
「とりあえず香織の情報によるとだけどな」
坂上は俺を無視して一方的に言いつづけた。
そんな坂上はさておき、しかし、気になる。どうしてこの彼女いない暦半年の俺が、愛と名乗る香織の知り合いから怨まれて、おまけに一生呪われてしまったんだろう。俺が知ってる愛ちゃんたちの中には、誰一人としてトラブルを起こした者は見当たらないのに。
それにしても自殺未遂ってどんな自殺を考えてたんだろう。不謹慎だがどうにも気になるものだ。と、思った瞬間、俺は何の迷いもなく坂上に訊ねていた。
「なあなあ。香織ちゃん、どうやって愛ちゃんが自殺しようとしたか言わなかったか?」
「さあ…? それは聞いてない」
なんだよ! 肝心なこと聞いとけよな。と思いつつ冷静に自分を見詰め直して、俺はその愛ちゃんとは全く関係のない赤の他人だということを改めて再確認した。
俺は詰めの甘い坂上に不満を持った。坂上の気が利かないのは、今にはじまったわけじゃない。仮に俺が坂上の立場なら事前に情報を収集してから、起承転結をきっちり付けて電話してやるけどな。
しかし、見ず知らずの香織の知り合いが、どうして俺なんかのために自殺を考えたのか不気味でならない。という前に坂上も香織もその愛ちゃんと俺が交際してたと思い込んでいるのが余計に不気味だ。
「もう一度ちゃんと話し合ってみたら」
不意に坂上が言ってきた。
もう一度って、何それ?
「愛ちゃんな、納得してないんだよ。一方的におまえから、もう逢いたくないって言われたことに」
俺はこの坂上の反応に恐怖を覚えた。
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