都市伝説

【この感動を伝えたい】 その② 八木商店著

いい加減鬱陶しいと思ったところで自殺未遂したと聞き、愛ちゃんの正体も確認しないままに、何故か俺はちょっとだけ良心の呵責に苛まれそうになってしまった。

が、何で俺が良心の呵責に苛まれなきゃなんないのかその理由を考えたとき、そうする必要なんてないじゃないかとふと我に戻り、自分を責めることに踏みとどまった。

「とりあえず香織の情報によるとだけどな」

坂上は俺を無視して一方的に言いつづけた。

そんな坂上はさておき、しかし、気になる。どうしてこの彼女いない暦半年の俺が、愛と名乗る香織の知り合いから怨まれて、おまけに一生呪われてしまったんだろう。俺が知ってる愛ちゃんたちの中には、誰一人としてトラブルを起こした者は見当たらないのに。

それにしても自殺未遂ってどんな自殺を考えてたんだろう。不謹慎だがどうにも気になるものだ。と、思った瞬間、俺は何の迷いもなく坂上に訊ねていた。

「なあなあ。香織ちゃん、どうやって愛ちゃんが自殺しようとしたか言わなかったか?」

「さあ…? それは聞いてない」

なんだよ! 肝心なこと聞いとけよな。と思いつつ冷静に自分を見詰め直して、俺はその愛ちゃんとは全く関係のない赤の他人だということを改めて再確認した。

俺は詰めの甘い坂上に不満を持った。坂上の気が利かないのは、今にはじまったわけじゃない。仮に俺が坂上の立場なら事前に情報を収集してから、起承転結をきっちり付けて電話してやるけどな。

しかし、見ず知らずの香織の知り合いが、どうして俺なんかのために自殺を考えたのか不気味でならない。という前に坂上も香織もその愛ちゃんと俺が交際してたと思い込んでいるのが余計に不気味だ。

「もう一度ちゃんと話し合ってみたら」

不意に坂上が言ってきた。

もう一度って、何それ?

「愛ちゃんな、納得してないんだよ。一方的におまえから、もう逢いたくないって言われたことに」

俺はこの坂上の反応に恐怖を覚えた。

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八木商店

コメディー、ファンタジー、ミステリー、怪談といった、日常にふと現れる非日常をメインに創作小説を描いてます。 現在、来年出版の実話怪談を執筆しております。 2020年(株)平成プロジェクト主催「美濃・飛騨から世界へ! 映像企画」にて八木商店著【男神】入選。入選後、YouTube朗読で人気を博し、2023年映画化決定。2024年、八木商店著【男神】が(株)平成プロジェクトにより、愛知県日進市と、東京のスタジオにて撮影開始。いよいよ、世界に向けての映画化撮影がスタートします。どうぞ皆様からの応援よろしくお願い致します。 現在、当サイトにて掲載中の【 㥯 《オン》すぐそこにある闇 】は、2001年に【 菩薩(ボーディサットゥバ) あなたは行をしてますか 】のタイトルで『角川書店主催、第9回日本ホラー小説大賞』(長編部門)にて一次選考通過、その後、アレンジを加え、タイトルも【 㥯 《オン》すぐそこにある闇 】に改め、エブリスタ小説大賞2020『竹書房 最恐小説大賞』にて最恐長編賞、優秀作品に選ばれました。かなりの長編作品ですので、お時間ある方はお付き合いください。 また、同じく現在掲載中の【 一戸建て 】は、2004年『角川書店主催、第11回日本ホラー小説大賞』(長編部門)にて一次選考通過した作品です。

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