都市伝説

【この感動を伝えたい】 その⑩ 八木商店著

奇妙だ。実に奇怪だ。

しかし、それはそうと、いつの間に坂上の説教会に変更したんだ、このコンパ? 俺、変更の報告もらってないんだけど。前もって知ってたら絶対にこなかったのに。

「羨ましいわぁ」

花田さんが俺だけに聞こえるように呟いた。

不思議だった。

どうして坂上のようになりたいんだ?

ここにいる連中は坂上に羨望を抱いている。俺が知る限り、坂上は他人から羨望の眼差しを向けられる人間ではなかった。俺は花田さんにその辺りのことを訊いてみようと、鼻から空気を吸い込まないように花田さんに顔を向けた。

「だって坂上さん、月に500万以上収入があるんですよ。羨ましいじゃありませんか」

「嘘ぉっ!」

俺は耳を疑った。

ご、500万だとぉっ!

フリーターって、やり方次第でそんなに儲かるのか!

確か坂上は昨年30階建てのマンションの上の方に引っ越したはずだ。一度だけ近所を通ったときに、真下から見上げたことがある。聞くところによると、月々の家賃は45万もするそうじゃないか。

俺には疑問だった。坂上がいつの間にそんなに金回り良くなったのかということがだ。

「私も坂上さんのように自由で気ままな生活がしてみたいわ」

確かに毎月500万入ってくれば言うことないだろう。しかし、坂上がまともな仕事でそんなに稼いでるとは思えなかった。これは何かヤバイことをしてるに違いないな。一体どんな職のバイトしてんだ?

「あのお、坂上はどのくらいバイト掛け持ちしてるか知ってます?」

俺は他の人に聞こえないように花田さんに訊ねた。

「社長さんですよ。だからバイトはされてないと思います。健康器具を販売されてるんです。私も香織さんから聞いただけで、まだ詳しいことは知らないんですけどね」

坂上が健康器具の会社を設立してただなんて。俺としたことが知らなかった。俺はてっきり今でもプータローだと思ってたのに。確かに坂上の言葉じゃないけど、俺は彼を自分の知ってる型にはめて見ていたようだ。

 

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八木商店

コメディー、ファンタジー、ミステリー、怪談といった、日常にふと現れる非日常をメインに創作小説を描いてます。 現在、来年出版の実話怪談を執筆しております。 2020年(株)平成プロジェクト主催「美濃・飛騨から世界へ! 映像企画」にて八木商店著【男神】入選。入選後、YouTube朗読で人気を博し、2023年映画化決定。2024年、八木商店著【男神】が(株)平成プロジェクトにより、愛知県日進市と、東京のスタジオにて撮影開始。いよいよ、世界に向けての映画化撮影がスタートします。どうぞ皆様からの応援よろしくお願い致します。 現在、当サイトにて掲載中の【 㥯 《オン》すぐそこにある闇 】は、2001年に【 菩薩(ボーディサットゥバ) あなたは行をしてますか 】のタイトルで『角川書店主催、第9回日本ホラー小説大賞』(長編部門)にて一次選考通過、その後、アレンジを加え、タイトルも【 㥯 《オン》すぐそこにある闇 】に改め、エブリスタ小説大賞2020『竹書房 最恐小説大賞』にて最恐長編賞、優秀作品に選ばれました。かなりの長編作品ですので、お時間ある方はお付き合いください。 また、同じく現在掲載中の【 一戸建て 】は、2004年『角川書店主催、第11回日本ホラー小説大賞』(長編部門)にて一次選考通過した作品です。

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