奇妙だ。実に奇怪だ。
しかし、それはそうと、いつの間に坂上の説教会に変更したんだ、このコンパ? 俺、変更の報告もらってないんだけど。前もって知ってたら絶対にこなかったのに。
「羨ましいわぁ」
花田さんが俺だけに聞こえるように呟いた。
不思議だった。
どうして坂上のようになりたいんだ?
ここにいる連中は坂上に羨望を抱いている。俺が知る限り、坂上は他人から羨望の眼差しを向けられる人間ではなかった。俺は花田さんにその辺りのことを訊いてみようと、鼻から空気を吸い込まないように花田さんに顔を向けた。
「だって坂上さん、月に500万以上収入があるんですよ。羨ましいじゃありませんか」
「嘘ぉっ!」
俺は耳を疑った。
ご、500万だとぉっ!
フリーターって、やり方次第でそんなに儲かるのか!
確か坂上は昨年30階建てのマンションの上の方に引っ越したはずだ。一度だけ近所を通ったときに、真下から見上げたことがある。聞くところによると、月々の家賃は45万もするそうじゃないか。
俺には疑問だった。坂上がいつの間にそんなに金回り良くなったのかということがだ。
「私も坂上さんのように自由で気ままな生活がしてみたいわ」
確かに毎月500万入ってくれば言うことないだろう。しかし、坂上がまともな仕事でそんなに稼いでるとは思えなかった。これは何かヤバイことをしてるに違いないな。一体どんな職のバイトしてんだ?
「あのお、坂上はどのくらいバイト掛け持ちしてるか知ってます?」
俺は他の人に聞こえないように花田さんに訊ねた。
「社長さんですよ。だからバイトはされてないと思います。健康器具を販売されてるんです。私も香織さんから聞いただけで、まだ詳しいことは知らないんですけどね」
坂上が健康器具の会社を設立してただなんて。俺としたことが知らなかった。俺はてっきり今でもプータローだと思ってたのに。確かに坂上の言葉じゃないけど、俺は彼を自分の知ってる型にはめて見ていたようだ。
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